羽虫の森 (1)

羽虫の森 − [精霊界の隣接点]
  アシュレイ:漂う羽虫に ---
アシュレイ …雪?
いや、羽虫か。
 
  アシュレイ:サマンサの意識とリンク  
 
市街地 東部 − [クリムナード通り]
  サマンサの主観視点
扉を前にしている
1-15
ニーチの声 どうだ? 開くか?  
  客観視点に戻る  
サマンサ ダメね。“刻印”でがっちりと
ロックされているわ。
そっちはどう?
 
  ニーチ:横の扉を一瞥して  
ニーチ ただの工房だ。  
  サマンサ:ニーチの側に来ながら  
サマンサ そうじゃなくて、被害の方よ。  
ニーチ “戦況”のことか?
市街のほとんどは制圧したぞ。
 
サマンサ 何人死んだの?  
ニーチ …60から70といった
ところだろう。
 
  ただ、連絡のつかない部隊も
あるから、正確な数は“作戦”が
終わってからでないとわからんな。
 
  サマンサ:うつむきがちに  
サマンサ 午後からモンスターの
数が増えてるわ…。
 
ニーチ 知っている。  
サマンサ 夜になったらこの地上に
だって出てくる…。
 
ニーチ …作戦に不満か?  
  サマンサ:きっと頭を持ち上げ  
サマンサ そうじゃない!  
  サマンサ:再びうつむきがちになり  
サマンサ ただ…、“シミュレーション”と
違いすぎるわ。
 
  ニーチ:腕を組み  
ニーチ おじけづいたか、サマンサ。
作戦に“変更”はつきものだ。
 
   
恐怖を支配せよ。  
  サマンサ、ニーチ:声のした方に顔を向ける
ギルデンスターン:登場
 
ギルデンスターン さもなくば魂を
“魔”に喰われるぞ。
 
サマンサ ロメオ……。  
  ギルデンスターン:サマンサとニーチの側に来て  
ギルデンスターン 我々の潜入に気付いたシドニーらが
我々に対抗しようと、魔界から
化けものどもを召喚しているのだ。
 
ギルデンスターン だが、やつらも制御できてはいない。  
  このままでは結界が破れ、
化けものどもはレアモンデから
溢れることになる。
 
ニーチ 早くシドニーを捕らえないと…。  
ギルデンスターン そのとおりだよ、コマンダー・ニーチ。
わかっているなら、さっさと行動したまえ!!
 
  ニーチ:一礼し、その場を去る  
ギルデンスターン 大丈夫か、サマンサ?  
  サマンサ:不安げに  
サマンサ シドニーは何を考えて
いるのかしら。
 
  自分で制御不可能な
モンスターを召喚する…。
自暴自棄になったというの?
 
  ニーチ:離れた場所から二人の姿を見ている  
ギルデンスターン ヤツのことを考えるな、
サマンサ。
 
サマンサ …生態系が崩れるのに何故?  
アシュレイの意識 生態系?  
サマンサ 生態系?  
  サマンサ:アシュレイの意識とリンクしているため、同じ言葉が口をつく
サマンサ:はっとする
ギルデンスターン:サマンサに平手うちをくらわせる
サマンサ:倒れ込む
 
ギルデンスターン …ヤツだ。
あのリスクブレイカーの仕業だ!
 
  サマンサ:口から血を流している  
ギルデンスターン くそッ!!  
  ニーチ:二人のもとへ駆け戻る  
 
羽虫の森 − [精霊界の隣接点]
  アシュレイ:サマンサと同じく口から血を流している ---
ローゼンクランツ そいつはケース72の
症例に似ているな…。
 
  アシュレイ:背後の壁によりかかっているローゼンクランツを認め、武器を構える 1-21
  ローゼンクランツ:平然と  
ローゼンクランツ そいつは他人の視覚や聴覚などの
五感にリンクするという“能力”だ。
 
  人はそれぞれ“波長”を持っていてな、
似た“波長”を捕まえて“のっとる”のさ。
 
  アシュレイ:血をぬぐう
ローゼンクランツ:アシュレイに近づく
 
アシュレイ 聖印騎士団ではないな…。
シドニーの仲間か?
 
ローゼンクランツ 能力のあるヤツは“波長”に
関係なくリンクできるンだが
アンタはまだ無理なようだな…。
 
ローゼンクランツ オレの名はローゼンクランツ。
アンタと同じリスクブレイカーだ。
 
アシュレイ 何だと?  
ローゼンクランツ アンタをバックアップするよう
リサイト長官から命じられたンだ。
パートナーってわけさ。
 
  ローゼンクランツ:握手をしようと手を差し出す  
  アシュレイ:警戒し  
アシュレイ リスクブレイカーは
単独行動が原則だ。
 
  それに、任務途中での
作戦変更は考えられない。
 
  ローゼンクランツ:手をひっこめ、やれやれとポーズをとって  
ローゼンクランツ アンタは何も知らンのだろう?  
ローゼンクランツ メレンカンプも、レアモンデも、
シドニーもなぁんにも
知らンのだろうが。
 
アシュレイ 知っているとでも?  
ローゼンクランツ そうさ。
知らないのはアンタだけさ。
 
  化けものや“魔”の存在を
議会やVKPは知っている!
 
  ただ、その情報が
“極秘”なだけなンだよ。
 
  アシュレイ:武器を収め  
アシュレイ 続けろ。  
ローゼンクランツ アンタが公爵邸からそのまま
レアモンデへ向かうとは
思わなかったンだよ。
 
  それで足手まといになる情報分析官より、
実戦で役に立つこのオレがパートナーを
務めるよう命令されたってわけなンだ。
 
アシュレイ “魔”の存在を
VKPが知っていると言ったな。
 
ローゼンクランツ ああ、このオレが
調査していたンだからな……。
 
  アシュレイ:ローゼンクランツに背を向け反対方向(森)に行こうとする  
ローゼンクランツ レアモンデは“牧場”なンだよ。  
  アシュレイ:振り返り  
アシュレイ 何?  
ローゼンクランツ アンタがそうであるように
“魔”に触れた者は不思議な“能力”を
身につけることができる。
 
  どんな“能力”を身につけるかは
その時になってみないとわからンが、
とにかく、人間以上の存在になれるのさ。
 
  とにかく、その“能力”を手にするためには
“魔”が必要だ。だが、“魔”はそう簡単に
制御できるシロモノじゃない。
 
  だから議会は結界を張り、
“魔”を放し飼いにすることにした。
 
  …幸い、このレアモンデは
“魔”とのつながりが深い。
 
  古代キルティア時代に
伝説の魔導師メレンカンプが築いた
“魔都”だからな。
 
  あとは“撒き餌”さえあれば、
“向こう”から勝手に
来てくれるってわけだ。
 
アシュレイ 撒き餌……?
まさか!
 
ローゼンクランツ そうさ、25年前の大地震は
“撒き餌”を作るための“調理法”さ。
 
  軽い地震  
ローゼンクランツ さまよえる亡霊どもが
哭いていやがる…。
 
アシュレイ “魔”の所有権をめぐる
争いというわけか。
 
ローゼンクランツ アンタは議会側の
代表ってわけだ。
 
アシュレイ ……ローゼンクランツといったな。
おまえの話はとても興味深い。
 
ローゼンクランツ おいおい、よしてくれよ。
嘘なんか言ってないぜ。
 
アシュレイ だが、確証はない。  
ローゼンクランツ ……それを探すのが
アンタの役目だ。
 
  アシュレイ:再びローゼンクランツに背を向け、森へ進みながら  
アシュレイ 次は斬るぞ。
…命が惜しければ日が暮れる前に
この街を出ろ。
 
  ローゼンクランツ:森とは反対の地下街方向へ歩みながら  
ローゼンクランツ 森を進むなら羽虫を追うンだな。
“魔”の通り道に羽虫が集まるンだ。